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2023.12.01

退去立会トラブル集

【退去立会トラブル集】賃借人がタバコを吸っていた場合、原状回復費用はどれくらい請求できるの?

不動産管理業界において入居者とのトラブルはつきものです。

先日、不動産オーナーのAさんより次のようなご相談がありました。

Aさん「新築から5年間住んだ入居者が退去することになりましたが、部屋内で喫煙していたため、壁紙の全面張り替えが必要になりました。
壁紙の張り替え費用は6年で減価償却され、ほぼ無価値(価値1円)になると定義されていると思いますが、今回の場合も費用の大部分は貸主が負担しなければならないのでしょうか?」

確かに、国土交通省のガイドラインや過去の裁判事例を見ると、賃借人が喫煙をしていて工事が必要になったとしても、工事にかかる費用の全額を請求することは難しく、通常損耗による減価分を考慮する必要があるとされています。

(参考:国土交通省のガイドライン再改訂版)
[事例 31]賃借人が負担すべき特別損耗の修繕費用につき、減価分を考慮して算定した事例 神戸地方裁判所尼崎支部判決 平成21年1月21日 〔敷金 31 万 1000 円 返還請求 28 万 3368 円のうち、25 万 3298 円〕 
国土交通省のガイドライン再改訂版 97ページに記載されています

解釈①不動産オーナーAさんが考えていた負担割合

まずは対象となる箇所の工事原価を計算します。

工事原価計算:
面積: 40平米
張替単価: 1300円/平米
合計工事原価: 40平米 × 1300円 = 52,000円

次に、この工事原価に対する賃借人(入居者)の負担割合を考えます。壁紙の償却期間を6年(72ヶ月)とした場合、賃借人の負担割合は以下のように計算します。

賃借人の負担割合計算:
償却期間: 6年(72ヶ月)
使用期間: 5年(60ヶ月)
残り期間: 72ヶ月 – 60ヶ月 = 12ヶ月
負担割合: 12ヶ月 / 72ヶ月 = 約16.7%

最後に、賃借人への負担額を計算します。

賃借人への負担額計算:
合計工事原価: 52,000円
負担割合: 16.7%

賃借人の負担額: 52,000円 × 16.7% = 8,667円

Aさんからは、工事原価52,000円のうち、8,667円しか賃借人に対して請求できないのか、という相談でした。
不動産オーナーの立場からすると、もし綺麗に使ってもらっていたら天井などは張り替えなくてもよかったのに、少しでも費用を負担してほしいという考えです。

実は同ガイドライン12ページには、次のような記載があります。

なお、経過年数を超えた設備等を含む賃借物件であっても、賃借人は善良な管理者として注意を払って使用する義務を負っていることは言うまでもなく、そのため、経過年数を超えた設備等であっても、修繕等の工事に伴う負担が必要となることがあり得ることを賃借人は留意する必要がある。
具体的には、経過年数を超えた設備等であっても、継続して賃貸住宅の設備等として使用可能な場合があり、このような場合に賃借人が故意・過失により設備等を破損し、使用不能としてしまった場合には、賃貸住宅の設備等として本来機能していた状態まで戻す、例えば、賃借人がクロスに故意に行った落書きを消すための費用(工事費や人件費等)などについては、賃借人の負担となることがあるものである。

これはつまり、善管注意義務違反と思われる汚損や破損については、減価償却を考慮した材料費と、減価償却を考慮しない工事費や人件費等とを賃借人負担とすることができると解釈することができます。

そこで今回のAさんの件も、下記のように考えることができます。

解釈②工事費や人件費等を計算した場合の負担割合

対象となる箇所の工事原価を、下記のように計算します。

工事原価計算:
面積: 40平米
張替単価: 1,300円/平米(材料原価300円/平米、職人工賃1,000円/平米)
材料原価: 40平米 × 300円/平米 = 12,000円
職人工賃: 40平米 × 1,000円/平米 = 40,000円
合計工事原価: 12,000円 + 40,000円 = 52,000円

合計工事原価は①と同じ52,000円ですが、張替単価1,300円を、材料原価300円と職人工賃1,000円に分けました

次に、この工事原価に対する賃借人(入居者)の負担割合を考えます。壁紙の償却期間を6年(72ヶ月)とした場合、賃借人の負担割合は以下のように計算します。(①と同じ)

借主の負担割合計算:
償却期間: 6年(72ヶ月)
使用期間: 5年(60ヶ月)
残り期間: 72ヶ月 – 60ヶ月 = 12ヶ月
負担割合: 12ヶ月 / 72ヶ月 = 約16.7%

最後に、賃借人への負担額を計算します。

賃借人への負担額計算:
材料原価: 12,000円
負担割合: 16.7%
賃借人の材料原価負担額:12,000円 × 16.7% = 2,000円

職人工賃: 40,000円
負担割合: 100%
賃借人の職人工賃負担額: 40,000円 × 100% = 40,000円

賃借人の合計負担額: 2,000円 + 40,000円 = 42,000円

このように考えると、Aさんは工事原価52,000円のうち、42,000円を賃借人へ請求できることになります。

しかし本記事に記載したようなケースは、一律に「必ず請求できる」というものではなく、個別事案によって見解が分かれる場合があります。
そのため、弁護士等の有識者の意見を参考にして対応することをお勧めします。

賃貸人・賃借人の双方がしっかりと法令や判例を理解する必要があります。

 

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